約3ヶ月間、病院実習があった。
私は臨床検査技師の資格を取得しようとしているので、主に検査室をあちこち回った。
検査室とひとことに言っても色々ある。
医療ドラマにもならない臨床検査技師の仕事、検査室の紹介もかねて、実習の記録の一部をまとめようかな。
臨地実習の目的
そもそも臨地実習は、講義や実習・演習で学んだ知識や技能をもとに、実際に医療機関で経験豊富な臨地実習指導者の指導・助言を受けながら具体的・個別的に臨床検査業務、他職種連携等を実践するもの。
現場での学びを通し、養成施設内での学修のみでは修得し得ない医療者としての倫理と責任を修得し、臨床検査技師がどうあるべきかを考察することを目的として行われる。
実習場所
私の臨地実習先は、とある大学附属病院だった。
1学年上の先輩には「運の尽き」「可哀そう」と言われた実習先。
その理由は以下の通り。
- 質問攻めにあうため基礎学力がないと見切られる(相手されない)。
- 指導者がめちゃんこ厳しい。
- 良い意味では色々体験できるが、悪い意味でレポートに書くことが多い。
- レポートに厳しい。再提出喰らいまくる人が多いらしい。
→医学部附属病院なので技師+部署によってはDr.もレポートを見る。
- 臨地実習先ではレポートを書く時間がない。
→他実習先では、午後ずっとレポートしてたとか国試解いてたとかよく聞いた。
- 鏡検以外は基本立ちっぱなし、体力勝負。
→倒れた人もいる。
レポート再提出こそなかったが、おおむね上記は事実だったといえる。
※実習先の病院によって違う
検査室ってどんなところ
検査室は色々あると先述した。
ではどんなところで何しているのかな。
感染症が疑われる患者から感染症等の起炎菌を検出するため、喀痰や尿、便などの多種類にわたる検体を用いて検査する。
また各検体から原因と思われる細菌をみつけだし、どのような薬が有効かなどの試験を行い、早期診断と治療・回復に役立つ情報を取得する。
実習した内容はざっくりこんな感じ。
- 標準予防策、バイオセーフティ
感染防護策。
患者さんに感染さない、患者さんから感染らない。
- 検体の採取、品質管理
保存温度が違う菌がいたりする。
発育条件も時間も違う。
- 菌名同定
Gram染色、選択培地への釣菌と培養、いろんな菌名同定に必要な試験をして、フローチャートを作成。
- 薬剤感受性検査
同じ菌種でも薬剤に耐性を持ってるやつと持っていないやつがいる。すると薬剤の選択が変わってくるんだと。
- そのほか検査いろいろ
PCR検査、質量分析器、遺伝子検査・・・など。
- 感染制御チーム、抗菌薬適正使用支援チームの参加
感染症専門医、専門看護師、薬剤師と一緒にチーム医療に参加。
ひとこと感想
感染症は微生物だけじゃなく、ウイルス、真菌なども扱うのでま~~~覚えることが多い。一番苦手。
ガウン着こむので暑い。
病理検査
臨床検査技師が生体の一部から切除・採取された組織や細胞の顕微鏡標本をつくり、病理医がそれを鏡検し病理診断が下される。
病理学的検査は病気の最終診断に関与し、病気および治療方針の決定、患者予後の推定などにかかわる重要情報を臨床側へ提供する。
大まかに組織診検査、細胞診検査、病理解剖に分けられる。
- 組織診検査
内視鏡や手術などで患者から採取された病変組織の病理学的診断を行う。
摘出された組織の診断(良性か悪性か、その組織型、悪性ならば腫瘍の広がりの程度など)、治療方針の決定や治療効果の判定など。
見学/実施内容(ざっくり)
・検体受付
・臓器の切り出し~標本作製(長~い工程&たくさんの染色)
・鏡検
・病理医に報告するまでの流れ
- 細胞診検査
擦過物、喀痰、液状検体や穿刺吸引検体から、腫瘍細胞、感染細胞などについて評価・診断する検査。
検体採取における患者の負担は軽く、標本作成も容易であるため、病気のスクリーニングや集団検診に利用される。
早期発見に加え、大学病院の場合は手術や放射線療法の予後の経過を見る際にも細胞学的検査が用いられる。
見学/実施内容(ざっくり)
・検体受付
・標本作成(染色含む)
・鏡検
・病理医に報告するまでの流れ
- 病理解剖
病理解剖学的検査 (剖検) は、病気で死亡した患者から取り出された諸臓器の肉眼的および組織学的な検索を行い、病気の本態、臨床診断の適正さ、直接死因、合併症や治療効果などを明らかにすることを目的として行われる。
検索結果は臨床へフィードバックされるとともに、将来の医学の発展に役立てられる。
臨床検査技師は剖検者に協力して死体解剖の介助にあたる。
たとえば胸部の肋骨を切開して取り外すこと、臓器の取り出し、縫合など。
実習先では、系統解剖、病理解剖、司法解剖が行われていた。
※系統解剖…人体の正常の構造を調べるために行う解剖。
※病理解剖…病死した人の状態や変化を調べる解剖。
※司法解剖…犯罪と関係があると思われる死体を刑事訴訟法にもとづいて行う解剖。
見学内容
胸部食道癌、アルコール肝炎、肺腺癌にて右葉切除の既往歴あり、パストスモーカー、気管支炎を起こして亡くなられた方の病理解剖見学。
本剖検の目的は肺炎菌の同定と肺腺癌の関与。
ひとこと感想
職人って印象。かっこいい。
病理も覚えること多い(当たり前)。
行ってみてわかったのは、換気環境こそ整っているが、ホルマリンとかキシレンなど毒劇物の中で作業するので揮発したものを吸い込んで気分が悪くなることがある。
病理検査室が体質的に合わない人もいる。
生理機能検査
検査担当者が直接患者さんに接して行う検査。
実習と見学内容はざっくり以下の通り。
- 標準12誘導心電図、ポータブル心電図
不整脈、心室肥大、心房負荷、心筋虚血、心筋梗塞、心筋障害、電解質異常の診断などに有用。
初日から対患者さんに実習させてもらえた。
- 心肺運動負荷試験
術後のリハビリがどこまでできるかとか調べるときに重要。
- ホルター心電図
24時間心電図をつけっぱなしにして異常波を調べる。
- 脳波検査、ポータブル脳波検査
てんかんとか脳障害の検索に必要。
- 筋電図検査
神経や筋肉の機能を調べる。
筋力低下、筋萎縮、感覚鈍麻、異常感覚とか。
- 肺機能検査
気管支原因なのか肺原因なのかどっちもなのかとか。
- ピロリ菌検査
ピロリ菌いたら胃癌になりやすいから洗浄しないといかん。
- 呼気一酸化窒素濃度
気管支喘息、気道炎症の指標。
- 足関節上腕血圧比
全身に血栓できてないかとか。
- 動脈硬化検査検査
血管年齢とか動脈硬化なってないかとか。
- 超音波検査
心エコー、腹部エコー、頸動脈エコー、下肢静脈エコー、経食道エコーなど。
超音波を用いて体内の病変を調べる。
超音波当てたらま~あ色々わかる。
ひとこと感想
検体検査と異なり対人なので接遇や救急対応が求められる。
あと心電図検査で「手首足首お胸見えるように服まくってください」って言ってるのにズボン脱ぎだすお爺とかいて面白い。
100万人に1人の病気の脳波見られたのは貴重な体験だった。
生化学的・免疫学的検査
採血した血液や尿などのさまざまな成分を分析して身体に異常がないか(腫瘍の有無も推測できたりする)、どの部分の疾患なのか、炎症があるのか、栄養状態はどうかなどを推測する検査。
下記、実習・見学した。
- グルコース測定
その日や2~3日前の食事、運動を反映する。糖尿病指標とか。
- HbA1c測定
過去1~2ヶ月の血糖コントロールの指標。糖尿病指標とか。
- 試験管ごとの測定項目
血液検査で採取する試験管で、紫のキャップは血液検査、黒のキャップは凝固検査、とか項目が色々違う。
採血管ごとに採血する順番も決まってる。
何の項目はどの試験管で調べられるよって話。
- 血液ガス分析検査
主に呼吸の状態や体内の酸塩基平衡(酸とアルカリのバランス)を調べる。
- アンバウンドビリルビン・AO-ビリルビン・ヘマトクリット・T-ビリルビン測定検査
新生児黄疸の多くは良性で生理的なものだが、まれにビリルビン毒性による神経障害をきたすため黄疸の管理が必要になる。
- 精度管理
機械のメンテナンスの話。内部精度管理、外部精度管理、標準手順紙とか統計とか校正とか色々。
- メンテナンス
機械メンテナンスや点検のお話。
工場見学みたいだったなー。
- 実験
溶血の影響、採血後経時的変化、室温放置、冷蔵放置、仰臥位と座位の違い(実は検査結果が変わる)、食前後の血糖とHbA1cの違いなどを実験したよ。
ひとこと感想
検査項目がたくさんあるんだけど(Na、K、Cl、NH3、TP、AST、LD、Glu…そのほか色々)、それぞれ正常値と異常値を全部覚えたり検出方法の原理も色々あるから覚えることが山積み。
頑張らないとな…。
血液学的検査
赤血球・白血球・血小板等の数や形態を調べたり、血球数が以前と比べて/平常時と比べてどの位推移したかを見て、炎症や貧血、病気の有無等を調べる検査。
手術前に絶対する血液の固まり易さ(凝固能)を調べる検査もこれ。
- 血球計算検査
造血器疾患の診断と治療効果の判定(鉄欠乏性貧血、リンパ腫、ミエローマなど)、炎症性疾患の推定、薬物治療の副作用の推定、放射線治療の副作用の推定。
貧血、脾腫、リンパ節腫脹は要注意。
フローサイトメトリーって機械を使うんだけど原理がめっちゃ物理って感じだった。
- 血液塗抹標本作成と鏡検
血液をスライドガラスにびゃっと引いて標本を作る。
染色して、顕微鏡で観察。
リンパ腫だったらリンパ球が異常に多いとか、血球の形から診断名がつくこともある。
め~っちゃ標本作って、いろんな病気の血液形態を鏡検しまくった。
- マルク(骨髄像)検査
骨髄穿刺で採取した骨髄液から標本を作製し、組織形態的所見から、各種血液疾患、悪性腫瘍の骨髄転移などの病態をみる検査。
病棟まで骨髄穿刺見学したけど、腸骨とか胸骨にぐりぐり孔を空けて、骨髄液を採取する。
見てるだけでめっちゃ痛そうだった。
骨髄液はドロドロギトギトしてて固まりやすい。
- 精度管理・メンテナンス
生化学検査とほぼいっしょ。
- 血栓・止血検査
これから手術など外科的侵襲を加えようとする患者に対し出血傾向の有無を調べたり、出血傾向のある患者(血友病とか聞いたことあるかな)に対して行う検査。
凝固作用と制御の仕組みがあって、いろんな順番で因子が複雑に働いて血液って凝固してかさぶたができる。
因子欠損症で血が固まりやすくなったり、因子が働きすぎないようにするインヒビターが欠損してて血栓できやすくなったりしてるので機序を覚えないといけない。
ひとこと感想
血液検査が2番目に楽しかった。
病理も血液も微生物も、鏡検は楽しい。
一般検査
尿・便・髄液・穿刺液などを検査する部署。
尿や便は血液検査と違い採血の必要がないので苦痛を伴わずに採取でき、繰り返し検査を行える利点がある。
- 尿検査
受付→尿定性、尿定量、有形成分、尿沈渣の鏡検前までの流れ。
尿蛋白、尿ビリルビンとか異常値が出たときの確認試験とか。
- 便検査
ほぼ機械がしますわ。
- 精度管理
生化免疫、血液とか他の検体検査といっしょ。
- 実験
10検体くらい検体を尿定性して1日室温放置
→翌日経過したら結果が変わるか、なぜそうなったか考察
- 尿沈渣
標本作製、鏡検(正常成分、異常成分)
- 寄生虫検査
虫卵の検査。
寄生虫覚えること多いよね。。。
実習先では5件/月ほどの割合でオーダーが入るらしい。
だいたい海外渡航した人らしいよ。
- 関節液検査
関節液は滑膜から分泌されたヒアルロン酸や糖蛋白質と血漿成分からなる。関節に何らかの病的変化が生じた場合水が溜まる状態が起きる。
ひとこと感想
実習のタイミングだと思うが、一般検査は年齢層の高めのおじさまが多かった。
上品なおじ様ばかりで人柄がいいのでお話していて楽しい。
ずーっとしゃべってたから要らん情報もたくさん教えてもらって面白かった。
午後はほぼ関係ないことしゃべって社員さんたちと仲良くなった。
人間関係が1番開放的で居心地が良かった。
実習はたくさんの尿検体に触れるので、汚いと思うか検体と割り切れるかで適性が分かれる気がする。
輸血検査
輸血事故や輸血副作用を防止し、安全な輸血を行うための重要な検査。
輸血関連項目として、ABO・RhD血液型、不規則抗体、交差適合試験等、その他の検査として直接・間接抗グロブリン試験などを実施する。
実習先は、細胞移植(リンパ腫や白血病の造血幹細胞移植とか)も輸血部でしてた。
-
血液型検査
ABO血液型検査、RhD検査。
事故で流血致死量とかとにかく血液型がわからない場合(実習先の病院で2回以上検査しないと血液型は確定しない。なので、「自分Aです」とか自己申告があっても信じてA入れたりはしない)、第一選択としてO型RhD陽性の血液が輸血されるらしいよ。
ABO血液型不適合輸血をしたら、結構すぐに溶血(赤血球が破裂して酸素運べなくなる)してきつい反応がでる。
ひどい場合は死ぬ。
-
不規則抗体検査
不規則抗体ってのを持ってると普通に輸血したときに溶血しちゃう。
それを調べる検査。いろんな検査がある。
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交差適合試験
不規則抗体がある人に対して、この血液製剤を輸血したらいけるかな~ってのを調べる検査。
-
製剤投与の話
アルブミン製剤、血小板製剤、赤血球製剤、血漿製剤などそれぞれの洗浄方法、保管温度、使用期限、単位数など。
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精度管理
機械の精度管理。どこかしこでするよな。
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症例検討
25件くらいしたかな。
-
臓器移植検査
HLA抗体検査とか、移植検査の話。
ひとこと感想
1番面白かったな~。手術室にも入れたし。
実習に行く前より見え方変わった気がする。
得意分野にしたいくらい興味持った。
実習を終えて
精神的にも肉体的にも疲れた。
正直バイトとの両立がきつすぎて、家で泣きながらレポートしてた。
自分で選んだ道だろうが、と高をくくっていたけれど、ここまでしんどいとは…。
勉強、レポート、バイトと毎日目まぐるしい中で、生活や時間は自制するしかなかった。
でも一緒に頑張っているクラスメイトで励ましあったり、地元の友人が応援してくれたりしたおかげで、なんとか頑張れた。
心から感謝しているよ。本当に。
読んでくれる方がどれだけいるかわからないけど、詳しい話ははしょったつもりなので、ほんの僅かでも何か臨床検査技師について、あるいは医療学生の臨地実習について伝わるといいなと思う。
きっと医療関係に就職したらこうやってまとめる暇などないだろうからな…。